第9章 デジャブ
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「……はぁ…はぁっ…」
壁外調査中、息を切らして走っている私。
…あれ?
なんで私何も付けてないの?
立体機動も、馬も、何も、誰もいない。
状況が全く思い出せないけど、とにかく走っている。
どこに向かうわけでもなく、ただ、ひたすらに。
「……っ、誰か!」
行きも絶え絶えに、助けを求めて叫ぶけどその言葉も虚しく空を切る。
誰もいないみたいだ。
真っ暗で、孤独の中にいるみたい。
「………」
不意に立ち止まると、声がした。
『貴方は、誰?』
聞いたことない声。
女?男?それすらも分からない。
「…私は、サリー!」
誰の声かも分からない問いかけに、私は返答した。
すると、くすくすと笑う。
『そう、サリー』
「えぇ、ここはどこ?」
『…ここ?ここはね?』
声がだんだん近づいてくるのを感じた。
その声は近づくと共に、少女の声だと分かった。
実体はない。
ただ、そこにいることは確かなはずだ。
自分の中で何故かそう感じていた。
『狭間…とだけ言えるかな?』
「……狭間…?」
『もう時期わかるはず、貴方にも』
くすくす、と笑っていた少女の声はいつしか耳元まで達していた。
『貴方はね、死ぬの』
「……っ、え?」
可愛らしかった声とは一変し、暗く重い声になった少女。
その言葉とともに現れたのは、
「……っひ!!」
こちらをニヤリと見つめる巨人だった。
「……っ、はぁ!はぁ…!!」
全力で逃げるのに、巨人はあっさりと私を掴みあげ
「……っ、いやあ!!!!!」
パキ!
と無惨にも音を鳴らして食べ始めた。