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49番目のあなた【D.Gray-man】

第13章  現在に至るまで


※すみれ視点






「ーーーー振り返らず、行くさ。この戦場から逃げろ。」


あの時のディックは、急に大人びてしまって


「すみれは生き延びろ。
ーーーーお願いだから、死ぬな。」


こんな状況にも関わらず、見惚れる程の笑顔を浮かべて、私の髪を優しく掻く。


だけど、その手は酷く震えていて


私から 動かなきゃいけない
私から ディックと離れなきゃいけない

そんな風に、思った。


「…わかった、ディックの言う通りにする。
助けてくれて、ありがとう。

また 会えるよね?」


「ーーーーーーーーああ。」


ディックの瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。
見間違いかと思った。

ディックはあの時、泣いてた。



それが、サヨナラの合図だと
もう二度と会えないんだと、わかった。



*  *  *





ーーーあれから約2年ほど過ぎ、
私は黒の教団の、科学班で働いている。



「ーーーーーーーーーディック?」

「………すみれ」


再び名前を呼んでもらえるなんて、思いもしなかった。生きて会えるなんて、思いもしなかったの。

だから、これは夢なんじゃないかな。

夢なら醒めないで
少し大人びた彼を、目に焼き付けておきたい


「やっぱり…ディックだ」


そう思うのに、思えば思うほと涙が込み上げ、視界がぼやける。彼の姿が霞んでしまう。
すみれの目から、一筋の涙が頬を伝った。


「…すみれっ!」


ディックが私の側へ駆け寄ってくれる。


「…ずっと、元気にしてた、さ?」

「うん…ディックの、おかげでっ」

はっきりと再び私の瞳に映る彼は、記憶とは少し異なり、少年から青少年へと成長を遂げていた。


やっぱり 夢かもしれない

そんな風に思ってしまう。


「すっかり見違えて…一瞬、気付くのが遅くなっちまったさ」

「そう、だよね。びっくりするよね、」


だって、あの頃の私は。
いつも化粧を施し、髪を結い上げ、綺羅びやかなドレスを纏った貴族令嬢だったのだから。


「話すよ…ディックと別れて、あれから何があったのか」




ディックと別れ、再開した

ーーーーーーーーーー現在に至るまで。

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