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49番目のあなた【D.Gray-man】

第12章 【番外編・SS】Valentine 2021



2月某日。
ここ最近、ブックマンとしての仕事の多忙さが嘘のように落ち着いている。

バレンタインの時期が近づき、街はチョコレートや焼き菓子、プレゼントの宣伝で溢れかえっていた。



(バレンタイン、ねぇ)

今までの俺だったら、そんなイベントは見向きもしなかったと思う。

(この国だと、男性から贈るのが常識なんだな)

お店の宣伝から伝えられるものは、女性が如何にも好みそうなチョコレートや可愛らしいお菓子、または女性向けの装飾品だ。

(あ、すみれが好きそうなデザイン…)

ついつい商品を目で追ってしまうのは、好きな人がいるからな訳で。可愛らしい小物に手を伸ばし、そして辞めた。

(いや、物をプレゼントするのはやめとくさ。)


後に、残ってしまうから。
以前、すみれにヘアアクセサリーを贈ったときはそんなこと気にもしなかった。

自分がすみれからマフラーを貰って思った事。
もちろん、誕生日に貰ったハンカチも嬉しかったが、この白いマフラーの方が思い入れが強い。

後に物だけが残り、その物に想いを馳せるなんて寂しいではないか。

(だから、Xmasプレゼントも。あえて花にしたじゃんか)

花はずっと残ることはない、いずれ枯れ朽ちる。だから、伝えられない想いを密かにのせて、プレゼントさせてもらった。



「…って、待てよオレ。なんかプレゼントする前提になってね?」

思わず自分自身にツッコミを入れる。
すみれとは恋人とか、そんな関係じゃねぇし!
…と、思いつつも。とある商品説明のポップに目が行ってしまった。

(へぇ。手作りのお菓子をプレゼントすんのが、流行ってるんさねぇ)

店頭には『男性も手作り!』と大きなポップが飾られていた。どうやら材料や説明書等が1つになっており、とてもお手軽だとか。

“手作り”

このワードに、今の俺はどうやら弱い。
…まあ。理由なんて言わずもがな、さね。


「へぇ、トリュフって簡単に作れるんだな」




〜箱に記載された説明書〜

①チョコを溶かす
②温めた生クリームと混ぜ、固まらせる
③固まった②を丸め、パウダーをかける

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「……コレ、ひとつください。」

俺は迷わずレジへ向かい、会計を済ませた。



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