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捻れた世界で誰と踊る?【ツイステ】

第14章 略奪ライアー!【Trey】



「ごめん、なさい…」

結局監督生は謝ることしかできなかった。

一瞬だけ見えたトレイの顔が怖すぎたからであった。
これは監督生にも分かる。
彼は今確実に怒ったのだ。
唯、理由はよく分からなかったが。


「はァ……。」

そのため息すらもビクッとしてしまうくらいだった。

どうして怒られているのか分からない。
けれど彼の"地雷"というものを踏んでしまったのだろうな、と理解した。
そして、次に飛び出す言葉が怖くてビクビクしていた。
もう私のことが嫌いになってしまったかしらと。


「…ふ。」
「?」
「…っははは。」

しかし彼はケホッケホッ、と咳き込みがら笑う。

「嘘だよ、嘘。怒ったと思ったか?」

ニヤッと口角を上げながら掴んだ腕を離した。

「え…?」
「悪い悪い。目には目を歯には歯を。嘘には嘘をと思ったんだが…本気で説教を喰らってるような顔をするもんだからつい、堪えられなかった」

監督生は緊張していた胸が一気に楽になって、なーんだ、と思った。

「酷い」
「反省したか?」
「…しました」
「それならよろしい。悪いが水を取ってくれ」
「はい」

トレイはよいしょ、と体を起こしてペットボトルから水を飲んだ。

「監督生、上手な嘘の吐き方って知ってるか?」
「知りません」
「そうだろうな」

悪戯っぽく笑って、また水を一口飲む。

「いいことを教えてやる。嘘を吐く時は、ケーキを作る時と同じように隠し味を入れることが重要なんだ」
「隠し味ですか?」
「そう。なんだと思う?」

えー?と監督生は首を捻る。
嘘は嘘じゃあないのだろうか。
彼はいつも嘘を吐く時に、何か別なものを含ませていると言うのか。

「"真実"だよ。」
「真実?」
「…嘘を吐く時には、隠し味に真実を少々混ぜる。そういうものだぞ」
「うーん」
「監督生にはまだ難しかったかな」

…だとしたら、自分の今の嘘は結構よくできていたと思うのだけど。

監督生はトレイに『男は弱った時が狙い目』だからお見舞いに来たのよ、と言った。

それは嘘である。
普通に心配していたからだ。

けれどその言葉の裏に潜ませた『あなたを狙っているわ』は真実だ。


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