第3章 粉砕ブレーキ!【Ruggie】
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「楽しそうじゃねえか、ラギー。」
嘲るようにレオナが言った。
「レオナさんほどじゃないッス」
「あぁ?」
「アンタ今日オレが飛行術行ってる間サボったでしょ?ルークさんから聞いたッス。ホント、毎日楽しそーッスね」
「チッ、あのストーカー野郎…」
ラギーは部屋中に落ちている脱ぎ捨てられた服とアクセサリーを、ヒョイヒョイ拾い上げながら1周する。
それから、退いて退いてとレオナを転がし剥がれかけたシーツを綺麗にかけ直し、掛け布団をふんわりと整えた。
「ったくレオナさん、努力って知ってる?」
「知らねえな」
「散らからないように、とかできないんスか」
レオナはそれを無視して整えたばかりのベッドの上でゴロゴロ喉を鳴らした。
「そんじゃ、オレは失礼するッス」
「待てラギー」
「なんスか」
「いつまで女の匂いつけて歩き回るつもりだ?ン?」
「…バレました?」
サバナクロー寮生は鼻が利く。
野郎だらけのサバナクロー寮において、女の子の匂い(花の匂いや石鹸の匂いだろう)がするのは明らかに異様だった。
「オンボロ寮の草食動物か。数日前からアイツの匂いがするとは思ってたが律儀に毎日通ってるんだなァ?」
「…レオナさんには関係ないッスよね」
「まさかハイエナ様のお前が、草食動物ごときに手こずってんのかよ」
「勉強教えんのに手こずるも何もないッス。つーか、ほっといて欲しいッス。」
「ハハ、悪ぃ悪ぃ。けど食える時に食わなきゃ生き残れねぇんだろ?ラギー。」
あーハイハイ、そうですね。
どうせオレは愚者。
悔しいけど手こずってるオレがいる。
あの子を逃したくないから、慎重になり過ぎてる。
そんなのオレが1番分かってるッスよ。