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捻れた世界で誰と踊る?【ツイステ】

第9章 独占マーメイド!【Azul】



アズールは愛おしげに監督生を見つめた。
もう外は暗かった。

「ですが、一番重要なものをお忘れのようだ」

じっとして、と監督生の顎に手を添えマジカルペンを持った手首をクリン、と回した。

「ほら。これでもっと完璧でしょう?」

水槽に映る自分の唇に、目にも鮮やかな赤色が乗せられている。

「この色は"小粋な赤"といって、一説に拠ればグレート・セブンの一人である海の魔女も好んだ色だとか。」
「そうなんですね、素敵…」

ブラックのドレスは彼女にエレガントな艶を添え、レッドの唇と白い肌と、そのコントラストが眩しい。
手脚に残る吸盤の痕は魔法で消すことはできたけれど、しなかった。

水槽に囲まれた空間は海の中の様で、現世に海の魔女が居るのならまさに彼女であろう、とアズールは思う。

彼女は間違いなく、この学園最強のヴィランだ。

小魚たちは旋回する。
談話室には軽やかなジャズが流れる。


「お綺麗ですよ」


アズールは信じられないくらいに甘い声でそう囁くと、ンフフ、と笑い片手を差し出した。


「今宵は僕と踊りませんか?素敵な脚が二本もあることですし」
「踊る?上手くできないかも、知れませんが…」
「それは奇遇ですね、僕もだ」


アズールは思う。
貴女になら少しくらい格好つかなくても、素直でありたいと。

それは難しいことだけれど、これからはもう、彼女を悲しませない様に。



「貴女が好きなんです、僕の手を取ってくれませんか?」


お願いだ。

これからもずっと、その手を離さず握っていてはもらえませんか。


「喜んで。」


二人は微笑んで、クルクルと踊った。
夜空の光と、水と、音楽と、シックな黒に身を包んだ二人は、なんとも幻想的であった。

これは悪党と、大悪党の小さな幸せの形であった。


「ああ、手に入れた」





二人は、いつまでもいつまでも、踊った。


その実、僕の方が貴女に"ものにされ"たのかも知れません。
彼女、それはそれは大変な大悪党さんですから。

しかし幸せだ。


このまま泡となって消えてしまっても。
貴女とならそれこそ本望だ、今ならそう思いますよ。






END.
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