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捻れた世界で誰と踊る?【ツイステ】

第9章 独占マーメイド!【Azul】



(それだ)


あまり、というか全く気が進まなかったが今はそんなことを気にしている場合ではない。

アズールは迷わず、自らの指先をガリッと噛んだ。

裂けたグレイの皮膚から、青い血がドロッと流れた。


「さぁ監督生さんこれを飲んで!嫌かも知れませんがどうか我慢して、」


効果のほどはわからない。
運任せは好きではないが、信じるほかなかった。

監督生は、海水と一緒に人魚の血を飲み込んだ。


「頼む、効いてくれ…!」

祈るように彼女の手を握ると、やがてピク、と動き握り返される。


「……アズール、せんぱい」
「監督生さん。息が、できるんですね」
「はい、おかげさまで」

奇跡的に、アズールの血液は彼女の体の中で何らかの反応を起こし、水中で息ができるようになったらしい。

「よ、よか、っった……。」

全身の力が抜けてデロン、と数本の足を垂れる。
優秀な魔法士であるアズールも流石に、本気で焦ったのだ。
ズリ落ちる眼鏡を監督生が掛け直してやる。

「やっと、手に入れたのに…危うく失うかと思ってしまった…」
「ありがとうございます、流石です、アズール先輩。魔法がとっても上手で、賢い。」
「…貴女が無事で何より。…帰りましょう、このままでは貴女の体が冷えてしまう。どの道危険ですから」

アズールは八本足のうち二本を監督生の体にしっかり巻き付け、更に片腕でギュッと抱き締めた。
僕が守らなくては、と思ったのだ。

「もう少し浅い所まで移動します。ここからオクタヴィネル寮までだと、貴女への負担が大きすぎる。」


ゆっくり、ゆっくりと二人は上昇していく。
アズールは泳ぎが得意ではなかったけれど、必死に脚で水を蹴った。


「わぁ。あのお魚可愛い。あっちの珊瑚も」
「呑気ですね。このままじゃ貴女、低体温症になりますよ」
「だって、嬉しいんだもの」


監督生はアズールにしがみついたままにこにこした。

愛しい人と、賑やかな海の暮らしを眺めている。
今なら必然的に彼に抱き締めて貰える。
彼女は世界でいちばん、今幸せなのだ。

アズールブルーに輝く海水に、手を伸ばして。
このまま時間が止まればいいのに。そう思った。

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