第1章 良夜ティーパーティー!【Malleus】
「あの、大事にするね。またお茶をご馳走する。それに、沢山話をするわ。」
「お前の献身に報いただけだ。何も畏まることはない。」
「うん…ありがとう」
監督生は大事に大事に、箱の中へシャドウとルージュを仕舞った。
明日、グリムに自慢しようと思った。
そして、ふっと顔を上げるとツノ太郎は今宵の満月を見つめていた。
その整った横顔と、立派な黒いツノを見上げた。
「何だ?ツノに触りたいのか」
「んと、すごく、立派だな…って。」
「気になるのなら触っても構わない。」
「さ、触ってみたい」
首が痛くなる程背の高い彼の顔を見上げる。
背伸びをしても届きそうにない。
「ツノ太郎、屈んで…」
「何をしている?もっと近くに寄れ。」
「へ?」
言われた通りに近寄ると、ツノ太郎は彼女の脇腹に手を添えて、いきなり抱き上げた。
「えっ?!ツノ太郎ちょ…っと」
「こうしなければ届かないだろう。お前は人の中でも小さいからな。」
身長202㎝の男の抱っこは流石に怖かった。
突然のことで監督生も心の準備が出来ておらず、あたふたとした。
「どうした?早く触るといい。」
「ツノ、」
「怒ったりはしない。お前なら酷い目にも合わせない。」
他の人なら酷い目に合わせるのだろうか。
監督生はおそるおそるツノに触れる。
固くて、強そうで、思ったより暖かかった。
「も、もういいわ、下ろして」
「何だ、もう仕舞いか。やはり僕が怖くなったか」
少し寂しそうにツノ太郎が言った。
「違う、高いのは怖かったけど、ツノ太郎は怖くないよ」
するとツノ太郎は意外だ、という顔をして笑った。
「…つくづく面白いな。お前は。フフ、皆は僕を見ると逃げていくぞ。」
「そうなの?変わってるわね」
「お前も大分変っている」
「え~?」