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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第4章 喧嘩は二度と止めたくない。



 春の高校バレー全日本高等学校選手権大会。会場は兵庫から遠く離れた東京都、東京体育館。会場は前日よりも熱気で溢れていた。なんせ今日は準決勝、稲荷崎高校の相手は宮城県の鳥野高等学校。

(からすの、......確か昔バレーが強かった...)

「って、侑くんが言ってた」
「知ってるよそんなこと」

 横に座る弟にそう侑くんに提言されたことをわざわざ伝えてあげたにもかかわらず、当たり前のように跳ね返される。まあいつものことだ。彼はもしかしたら私がまだ肌色のペンで湿布を肌色に変えようとした身内の奇行に心を痛めているに違いない。
 ていうか、誰のおかげで 正月開け早々わざわざ兵庫からここまで来られていると思ってんだと、少しばかり苛立ちを覚えながら、制服の上から着ていた弟のウィンドブレーカーに顔を埋めた。これは東京の寒さをなめてた私への代償だ。そして真正面では稲荷崎高校の吹奏楽部と応援団が歓声を上げている。
 もちろん私はそんなものに所属しておらず、すべて自費だ。交通費もチケットもホテル代も外食費も、しかも弟の分までなぜか私のバイトの貯金を崩されている。案の定お母さんに言ったら心配だからと断られて私を引っ張り出してきたらしい。この金の恨み、絶対墓場まで持って行く。でも、私長女だし。長女じゃなかったら今頃殴り合いしてるよ私。長男ってすごいんだな。私、弟とかおんぶできないもん。

(……帰ろうかな。どうせひとりで見てるし)

 つくづく私は最低な人間だと思う。この場にいる会場の皆には申し訳ないが、私はバレーに何の想い入れもない。
 こんなに熱気に溢れてるって言うのに、私はワクワクもしないし、点を取っても「おお、すごいな」くらいしか思わない。

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