【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第3章 3分の1でも選ぶとは限らない
最近、丸くなった気がする。
…………違う、俺ではない。後ろの席の人の話をしている。きっかけは多分、多分だけど、よさこい祭を過ぎてからな気がしている。理由は知らないし分からない。何となく勘だ。
放課後、班ごとの清掃中。バケツで雑巾を絞る水田さんの雑巾を再びバケツの水に押し込むと、何事もなかったかのように再び絞っては雑巾がけを始めた。昔はもっと、懐きそうで懐かない猫みたいに気まぐれだった。まあ面倒ごとは避けているのは何となく感じていた。 それなのに、最近あからさまに後ろにピタリとくっついていても「何?」としか言われない。多少嫌な顔はされるけど。
ある時は、俺が持っていたプリントを後ろの席の水田さんへ渡すフリをしてずっと握っていたらシャキンと何かを切った音と同時に軽くなった自分の手元を見ると、プリントの角の切れ端だけが残り、敗北感とプリントの切れ端という名のゴミだけが残った。
なんか面白くない。つまんない。前の方が、もっと面白い反応してたのに。
九月の上旬、まだ兵庫は暑い。
登下校中にあるスーパーでチューペットを買ってもまだ美味しく頂ける気温ではある。月曜日は基本自主練で、参加は自由。授業が終わって双子の喧嘩にも説教にも巻き込めれない部活のない、貴重で穏やかな日。
帰宅ラッシュで電車も混むし、近くの公園でチューペットを食べてから帰ろうと思っていた。