第5章 翼をもたない小鳥はずっと
リヴァイがリアの部屋を訪れなくなって早2カ月。
エルヴィンはリヴァイの頑固さに呆れていたが、リアの症状の急変でそれどころでは無くなっていた。
時計や文字の読み書き、最近では人物の識別まで危うくなっており、日常生活にも支障が出始めていた。
それはリヴァイのことも例外ではなく、リアの中のリヴァイは会わない月日を示すようにどんどん薄くなっていく。
それをいいことに、リアの中の僅かに残るリヴァイとの思い出までも自分にすり替えようと考える自分自身に腹が立ちつつも、エルヴィンは自分もいつリアの中から消えるのかと不安に駆られていた。
「リア、いるかい?」
扉を開け入室するエルヴィンを見るとリアは満面の笑みで応える。
エルヴィンは自分を見て、"まだ”笑ってくれることに安堵する。
「はい!」
名前を呼ばれた子犬のように嬉しそうに笑うリアを見ていると、本当は記憶が無くなるなんて嘘ではないかと考えてしまう。
「今日が何の日かわかるかい?」
「いえ…誕生日とかですか?」
リアは思い当たることがなく頭上にハテナが浮かぶ。
首を傾げる彼女もまた可愛らしいなあなんてらしくもなく考える。
「いや。今日は記念日なんだ。」
エルヴィンはベッドのリアの横に腰掛けると、その小さな手を握る。
「君が私に着いていくと決めてくれたのが8年前の今日なんだ。」
あぁ…そうか。
リアは1番はっきりと覚えている過去を思い起こしていた。