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海賊王の娘

第3章 放浪記



マルコの後ろで雄叫びを上げていた人たちも一気に黙り込む。
言うつもりなんてなかったのに…。

「ありがとよい。」

感謝されるようなことは何もしてない。
エースやルフィを救うこともせずに黒ひげに負けて、助けられて
今もただ何もできない。
無力さを痛感して悔しい。
そんな私の気持ちが伝わったのか、マルコは俯いた私の頭を優しく撫でた。

「その気持ちだけで十分だよい。」

赤の他人である私なんかに止める権利はない。
言い返す言葉が見つからなくて黙り込んでしまう。

「お前もエースの意志を継ぐ人間だ。
 できることなら守ってやりてェが…」

マルコの思いがけない言葉に驚く。
海賊王の血を継ぐだけでなく、能力のせいで追われていることを案じてくれているらしい。

『あなたこそナメないで。自分の身くらい自分で守れる。』

反抗期のようなセリフを吐いてしまう自分を恥ずかしいと思うが、それは全てマルコが優しい顔をして笑うせいだということにしておく。
気を取り直して、またマルコと目を合わせる。

『もう一度言うけど、黒ひげ達の力は計り知れない。
 この一年、悪い意味で成長が著しくて海軍も手を焼いているそうよ。
 勝機は無い。
 …それでも行くの?』

「あァ。
 アイツは何があっても許しちゃいけねェ男だ。
 爪痕は残して帰ってくるよい」

気怠そうな瞼なのに、その奥には真の通った瞳がある。
決意は全く揺らいでいないらしい。
ここで潔く諦めなければ、目の前の彼らの思いを、覚悟を踏みにじることになる。

『なら、お願いがあるの』

「なんだ?」

マキノさんの言葉を思い出して、私は右手の小指を出した。

『約束して。
 私はやらなきゃいけない事があって、もうここを出なければならないけど、
 次会う時にエースの話を沢山聞かせてほしいの。』

ふっと笑いながら小指を差し出される。

「…あァ。
 約束するよい。」

マルコの長い小指を私の小さな小指で握り返す。
それに満足して離すと、またフードを深く被り直した。
船に乗る前に感謝の意を込めて深く一礼をする。
来た時とは違う優しい雰囲気を感じながら島を去った。







「死なねェ理由が出来ちまいましたね」
「あァ。何が何でも倒して生き残るぞ」

「「「オォォォオオ!!!」」」
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