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《イケメン戦国》時を越えて

第7章 時を越えて〜顔合わせ〜


ーー翌日、午後。

「お見えになられました。」
三成がそう言って広間に通したのは、春日山の面々。
信長を筆頭に一列に並んだ織田軍の向かい側に案内される。

入って来たその人を見て
「…義元様…生きて…」
家康が驚いて呟く。
それに気付いた義元が
「元康?久しぶりだね。ああ、今は家康か。」
ニコリとして答える。
「はっ、まさか今川義元まで生きながらえていたとはな。」
信長が呆れたように言うと
「あの時、死に損なってね。城も領地もないから、信玄の伝で春日山に世話にならせてもらってるんだ。」
「ほう。春日山で再起の機を狙っているというわけか。」
「いや、その意思はないよ。頼まれれば助太刀はするけど。余生は美しいものを愛でて過ごすつもり。」
「くっ、相変わらず浮世離れした男だな。」
「元々、戦は好きじゃないからね。今の生活をとても気に入ってるよ。」
そう言うと、優雅に微笑んで義元は腰を下ろした。

その様子を黙って見つめていた家康。
幼い頃から人質として今川家で過ごした日々を思い出し、唇を噛んだ。
義元は家康を可愛がってくれたが、それを妬んだ今川家の家臣にバカにされ虐められた屈辱の日々。いつか見返してやると拳を握りながら、弱い自分を呪う生活を長く送った。
(俺は強くなれたのだろうか?)
突如、今の自分はまだ弱いのではないかと不安を覚えて下を向く。

そこへお茶を運んで来た舞。
「家康、お茶どうぞ。」
「………」
俯いたまま返事をしない家康を不思議に思い、
「家康?どうしたの?」
と再度声を掛けるも反応がない。
心配になって腕をそっと叩く。それでハッと我に返った家康は、そこでやっと舞に気付いた。
「……何?」
素っ気なく言う家康に
「良かった!呼んでも気付かないから寝てるのかと思ったよ。」
ニコニコと言う舞。
「あんたじゃないんだから、こんなところで寝る訳ないでしょ!」
そう返せば
「そんな!人を寝坊助みたいに言わないでよ。ぶぅ!」
膨れっ面で言い返して来る。
そんな舞を見て
「ぶぅ!って…ぶぶっ…くっくっく…」
笑い出した家康。
それを見た舞は
「ふふっ。今日も家康を笑わせられて良かった!」
と嬉しそうに笑った。
そのやり取りで、先ほどの憂いなどどうでも良くなった。

(舞の笑顔のためなら、どこまでも強くなれる気がする。)

そう思い、不思議と力が湧いてくる家康だった。
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