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《イケメン戦国》時を越えて

第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編


「舞が誰かと手を繋ぐことは…」
家康は話し続ける。
「手を繋ぐことは舞にとって、『一人じゃない』って安心するための、言わば心の薬なんだと思う。親情、友情、恋情、愛情…。その思いは相手によって違うけど、舞にとって手を繋ぐことは相手と自分の心の距離を測る術なんだ。」
「心の薬…」
「そう。だからお前の言葉に傷付いたと言うより、困惑したんだ。『手を繋げないならどうすれば良いの?』って。そして、『自分の行動は迷惑だったのか』って怖くなった。だから、逃げた。」
「……」
「お前が面白くない気持ちは分かる。俺でも同じように思うと思う。だけど、舞の側にいるならそれも含めて包み込めないと、舞を傷付けるだけだ。舞が大事だと思う人間が、同じように舞を大事に思ってるって安心させてやれないなら、隣に立つ資格はない。お前にその覚悟がないなら、記憶が戻った時点で手を離して。お前が手を離しても、俺も光秀さんもいる。」
家康はそこまで一気に言うと、幸村をじっと見た。

「俺は…俺は、これから先どんなことがあってもアイツの手を離さねえ。なんにも分かってなくて、分かってやれなくて傷付けたけど…これからだって傷付けるかもしれないけど、それでも俺は絶対に舞の手を離さない。舞は誰にも渡さねえ。舞の隣に立つのは俺だけだ!」
強い瞳でそう言い返した幸村に
「ふぅ。舞ってほんとに趣味悪い。」
家康がポツリと言う。
「趣味悪いと思うけど、舞の本当の笑顔を引き出せるのはお前だけだ。悔しくてムカついてしょうがないけど、お前じゃなきゃダメなんだってことは、見てれば分かる。あー、もう!なんでこんな単細胞ヤローなんだよ。ほんと趣味悪い!」
「…趣味悪い、趣味悪いって連呼すんな!」
額に青筋の浮かんだ幸村を見て
「ぶっ」
家康が吹き出す。そして
「まあ、単細胞なりに頑張れば。」
と言った。
「…単細胞って!!」
さらに青筋が増えそうな幸村だったが、
「家康、ありがとな。舞も俺も…お前がいてくれて救われた。」
素直に感謝を述べた。
「……」
急に足早になり、無言で進む家康の耳が赤い。
「照れてんのか?」
幸村が反撃とばかりにからかえば
「うるさい!」
そう言って、家康はさらに早足になって行ってしまった。その背中に
「ほんとに本当にありがとう。」
幸村は笑顔で言った。
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