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《イケメン戦国》時を越えて

第13章 時を越えて〜分岐〜家康ver. ※R18あり


最後に信長は大望を叶えた後の生活を思い、妻を娶らなかった。信長は近々、跡目を秀吉に譲り、日ノ本を出て海を渡る。まだ見ぬ世界で見聞を広げ、日ノ本の発展に役立てたいと思っていた。いつ戻るのか、この先どうなるのかも分からない状態で、妻を娶ることはできなかった。
それに、信長もまた謙信と同じように舞を想い続けていた。望んでも手に入らなかった唯一のもの。永遠に手に入れることはできないと分かっていても、諦めることはできなかった。そんな信長の気持ちを理解していた側近たちは、妻を娶ることを強要もせず、ただ見守っていた。

そんな信長の元へ、三太郎がやって来た。
「いつかした戯言を覚えておいでですか?」
そう言って茶の準備を始める三太郎。
「…ああ、あの時か。」
そう言った信長は、いつだったか三太郎と話したことを思い出した。

『三太郎、天下布武を成し遂げた暁には貴様は何を望む?』
『御館様とゆるりと茶でも飲みたいですな。』
『ふっ、欲のないことよ。…だが、俺も同じだ。』

「某はその戯言を心の支えにして来ました。どうかその願いを叶えさせてください。」
そう言って傅いた三太郎に
「ああ。美味い茶を飲ませろ。」
と信長は笑った。
その時、
「失礼します。」
と言って入って来たのは舞。
「お茶請けをお持ちしました。」
と笑顔で言う。三太郎を見やると
「某の戯言はいつしか『信長様と舞様と己の三人で』に代わっておりました故、舞様にもお願いいたしました。」
と悪びれる様子もなく言う。そんな三太郎に信長は
「くっ、貴様に悟られるとは俺もまだまだだな。」
そう返して脇息に凭れた。

それから、三人で穏やかな時を過ごした。美味しいお茶と団子を頂きながら、他愛もない話に花を咲かせる。信長にとって、この上なく幸せな時間だった。消化不良だった舞への想いが優しく穏やかなものへと変化して行く。

宴が終わり、夜が明ける。
安土に集結していた面々はそれぞれの場所へと帰って行く。
次に皆がそろうのはいつになるかは分からない。でも、その中心にはいつも舞がいて、舞に何かあれば我先にと集まって来るだろう。

500年の時を越えてやって来た女子は、この時代に根を張り大きく花開いた。その笑顔は、離れていても皆の心を明るく照らす。
本当の意味で『天下布武』を成し遂げたのは、その女子だったのかもしれない。

〜家康偏・完〜
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