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魂の色【銀魂短編夢】

第31章 春風(高杉夢)


わたしにも、あなたの罪を背負わせて。

わたしがあなたを幸せにしてみせるから。

だから、どうか――――


「春風か」

頬を撫でる風がどこからか連れてきた桜の花びらがくるくると宙を舞い、遼はふと笑みをこぼす。
その姿に、隣を歩く銀時が揶揄うような声を掛けた。

「やっと能天気な顔が出来るようになってきたな」
「そんなに暗かった?」
「湿度100%、背中でキノコの栽培でも始めるのかと思ったぜ」
「食べれるキノコなら、商売できたかな?」

おどけて返した遼は、抱えた荷物をよいしょと持ち直す。

「随分重たそうだな。半分持ってやるよ」
「ううん、大丈夫。これは全部――わたしが持たなきゃいけないから。それに、銀ちゃんは他人の荷物まで背負い過ぎだよ」
「んな事ぁねぇだろ。俺は自分の荷物は全部置いてきちまったからな」

まるで過去とは決別したかのように話す銀時に、遼はほんの少しだけ心が軽くなった。
あの日、あの時、誰よりもたくさんの荷物を抱えてしまったはずの銀時が背筋を伸ばして生きている。
それは遼にとって勇気であり、希望だ。

「銀ちゃん、わたし、ね……あの人が、誰よりも大切だったの。あの人を失いたくなかった。わたしの、すべてだったから」
「アイツもそうだった――ら、良かったのにな」
「そうしたら、一緒に生きていけたのかな?」
「どうだろうな。アイツは妙なところで捻くれてるから」

慰めの言葉一つ語らない銀時に、遼の中でどろどろと渦巻いていた感情が鎮まっていき、真実が零れ落ちた。

「わたしは、高杉晋助を愛していた。見返りなんて求めないくらいに、重く、深く。だからどうにか、苦しみや痛みを取り除いてあげたかった。心の重荷も罪も、わたしが担って、償いを手助けしたいって――いつか、幸せになっても良いんだって思ってくれればって……!」

言葉を詰まらせた遼の頬を涙が濡らすのを見て、銀時は遠く空を仰ぎ見る。

「おまえがアイツを愛してたのは、ちゃんと届いてるよ。だから今は、しっかり泣いてやれ。アイツの……高杉の為に」
「……晋ちゃん――晋助っ」

遼はしゃくりあげながら彼の名前を呼んだ。
いとしくて、ひどくて、かわいそうで、もう二度と会えない、春風のような人の名前を。
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