第3章 初対面
コンコンコン―――
夜の午前1時のことだった。
非常識なこんな時間に自室のドアがテンポ軽くノックされて布団から這い上がる。
当然のように眠れていなかった私は、グシャグシャにした頭を軽く整えてドアを開いた。
ドクターが来たのか、またはアーミヤが私の新しい服を配給しに来てくれたのか―――否、そこにいたのは初めて見る顔だった。
目立つ綺麗な白髪に、前髪と後ろ髪に黒いメッシュを入れた青年が軽く口角を上げて笑っていた。
「こんばんはっ」
本当に現在の時刻は午前1時なのか、と疑ってしまうほどの元気の良さに思わず気圧された。
しかし、挨拶をされたら返さねばならない。変なところで祖国が引いている真面目気質の血が騒いで、戸惑いながらも返した。
「こ、こんばんは…」
すると、青年はまたもニコリ、と笑って見せて軽く小首を傾げる。あざとい可愛さがあるが、それよりも気になったのが彼の頭より少し傾いた所に位置する金色の輪に視線を奪われた。その傾きはどこかで見たことあるような気がする。
「あ、俺は行動予備隊A4に所属するアドナキエルと申します」
「え、あ、はい…」
「ドクターから仰せつかってきました。今日から俺が貴方の身の回りを管理することとなりましたので、挨拶しに来ました」
「は、はあ」
それはどうもご丁寧に…とは言えない時間だ。何を考えているのだろう、この人は。
いや…そもそも"ヒト"なのか?
「俺の輪っかが気になりますか?」
「えっ」
考えられていることがピタリと当てられて自分でも驚くほど肩が跳ねあがった。
図星の反応をした私に、青年…アドナキエルさんは2回の瞬きの後、クス、と笑ってみせた。
「こんな輪っかや、光の翼が生えている人はサンクタと言います。…報告通り先民を知らないようですね」
「サンクタ…先民?」
「アーミヤさんや、貴方を看てくれたアンセルも先民ですよ」
「へぇ。…綺麗」
思わず興味をそそって頷いてしまった。私はハッとして顔を背ける。
関心してどうする。まずはこの青年を追い返してさっさと寝ないと本当に倒れてしまう。私の事を煩わしく思っている隊員たちが倒れるほどの労働はしていないだろう、と言うかもしれない。
だが追い返す、ということに慣れていない私はまず、スウと息を吸い込んで吐いてから言った。