第9章 酷い夢
真っ先に頭に思い浮かんだのはあの3人だったからだ。その中でも、一番自分に頼りにしている者が全てをくれると。
「助けて!!」
「!お前!!」
さくらは右にある出入り口から逃げようと思った。だが、出入り口は自身が生み出した氷で覆われて開かなくなっていた。
近付いてくる兵士に、瞬時に駄目だと悟ったさくらは、目を瞑りながら右手に持つ剣を後ろへ振るった。
「私に、近寄らないで!!」
当然目標も何も見ていないまま振るった一撃。―――それはさくらに戦闘経験がないと知っていて近付いたレユニオンの兵士の肩を切り裂いた。
「ぐあっ!!」
「!!あ…」
肉を裂く感覚が直に伝わり、思わず剣を落としてしまった。さくらは混乱と困惑で、蹲ってしまった兵士の前に膝をついて血が大量に流れる肩に手を近づけた。
「ご、ごめんなさ…そんなつもりは…なくて…ち、血が…!!」
「…お前は…本当に…戦いを知らないんだな」
「何を、!う、ぁ…!」
突然さくらの体の周りに炎が舞い、天井に火柱を作った。それは鉄よりも硬い素材の天井を溶かし、辺りに広がっていく。
「…あの剣は源石が多く埋め込まれている。お前の本来の力を出すのはお手の物…だが、一度放てばコントロールが利かないとはな…ここはさっさとずらかるか」
「!っい…やだ!!」
源石の後遺症である頭痛に苛まれながらもさくらが右手を強く振るう。すると、青い電流が男の横を通り、壁に当たってはまるで蛇のように這い始めた。
男はそれに臆することはなかったが、傷に顔を歪める。そして暴れるさくらを捕まえては抱えて地面を蹴り、天井から抜け出した。
「い、やだっ…行きたくない…離して!!」
「離してもいいが…ここで離せば確実に落下死だぞ」
「っ…うう」
男の跳躍は人間のそれを超越していた。
どんどんと高所から高所へ移り、綺麗な着地でロドスの大きな門を掻い潜り、停めてあったバイクに跨り、荒野を進んでいく。