第3章 掴んだ手がかり
喫煙所でタバコを吸うカラ松警部は、ミューズが残したデータ、MicroCardを手にしていた。これもまたどこにでも売っているものだ。イヤミの時といい何かしら残すものの、ミューズを特定できないでいる。
「げっ!お前かよ、クソ松…」
声の方を見ると一松警部がいた。
「ああ、そういやさ。怪盗ミューズにゾッコンなん?」
唐突の問いかけにむせるカラ松警部。
「ぶっ!げっほげっほ!誰から聞いた?!って、おそ松か…」
「警察としてどうなの…?盗賊に恋するとか」
カラ松警部が一松警部の胸ぐらを掴む。
「もう一度言ってみろ!ミューズはな、盗まれた物を取り返してるだけなんだ!それも、どいつもこいつも悪どいことをしてきた奴ばかりだ。その証拠を残して行く、根はいい子なんだ!」
「それでも盗んだことに変わりはないでしょ!」
「……っ!だが、警察だって人の子だ。異性に恋して何が悪い!」
「…あんたが後悔しないってんならいいよ。ミューズも捕まれば刑務所行きなんじゃない?待ってられるの?」
「待つさ!何年かかろうと、待ち続ける。ミューズは俺の女だ」
「………ふぅん。本気なんだ?」
「ああ。この両手で抱き締めたい。愛してるってささやきたい」
「そのミューズ?が残した物に、彼女の情報はないの?」
「出てこないんだ。出てたら今頃お縄さ」
「…あ、そうか」
ピリリリ!カラ松警部の携帯が鳴る。
「俺だ。……なんだって?!今行く!」
走り出すカラ松警部。その背中を見送りながら一松警部はフッと笑った。
「熱いこって…。あいつがあんな顔したの、初めて見たな」
電話をしたのは鑑識のチョロ松だった。カラ松警部とは腐れ縁とも言うべき仲だ。
「連絡、サンキュ!」
「これが出てきたんだ」
差し出されたのは、小型スピーカーだった。
「じゅうたんと柱の隙間にあったんだ。ワイヤレスの珍しいやつだよ。これならいつどこで買ったか分かる可能性が高い」
「おお!これで進展するな!…そうか、姿がないのに声がしたのは、これを使ったからか」
「そうだろうね。調べてみたんだけど、半径3メートルくらいなら届くらしいんだ」
「高性能だな」
「だからこそ足取りが掴める」
「よし、調べ尽くしてやる!サンキュ、チョロ!」
「お礼はアイドルのライブチケットでね」
「わかった!」