第2章 ブラック氏の黒歴史
「せめてミューズの前に雇われていたメイドが見つかればな…」
イヤミが捕まったことで少なからず出てくると踏んでいたカラ松警部だったが、一向に出てこない。それどころかイヤミの屋敷から出てくるのは、ミューズのことだけだった。
「ということは、イヤミが雇ったメイドはミューズだけってことか。ならいつ雇ったんだ…」
資料をパラパラとめくる。
「よ、カラ松」
両手に缶コーヒーを持ったおそ松警部が来て、ひとつをカラ松警部に渡した。
「なんだ、おそ松か」
「随分ご挨拶だねぇ、カラまっちゃーん。なーんか?すっかりお熱らしいじゃん、怪盗ミューズにさ」
「ミューズはほんとはいい子なんだ。なぜ怪盗になんてなったのかを知りたいし、出来ればやめさせたい」
「ふぅーん?もしかして、恋!しちゃった?」
「えっ?!」
言われてみれば最近、寝ても覚めてもミューズのことを考えている自分がいる。しかし果たしてそれが恋なのかはわからない。ただ、彼女が何の目的もなく怪盗になっているとは思えないし、怪盗なんてやめて自分の
「ん?!自分の……何だ?!」
心で言いかけた言葉に自分で突っ込んだ。何を言おうとしたのか。
「ははは。ほらー、恋してる」
「……恋……」
夕日に染まる空を見上げる。
「恋、か。……ミューズ……君に、乾杯…!」
缶コーヒーを空に向けて差し出す。
「カラ松警部!」
走ってきた部下がおそ松警部の気付き頭を下げる。
「今日はにぎやかだな」
「怪盗ミューズからの予告状が来たとの通報がありました!」
「おっ、早速来たね。行ってらっしゃい、カラまっちゃん」
「ああ、いってくる!」
現場へ急行するカラ松警部。場所はこれまた悪名高いブラック家だった。
「カラ松警部、お疲れ様です!」
「遅いぞ!何をしていたんだ?!」
「申し訳ございません、ブラックさん。早速ですが予告状を見せて下さい」
前と同じカードに同じマークで
[今夜8時30分、ヴァカボーン邸から持ち出された名画 ハッシモルトニャーの憂鬱 を頂きに参上する 怪盗ミューズ]
ヴァカボーン邸といえば数年前に自己破産した富豪だ。
「ヴァカボーンだか何だか知らんが、今は俺の物だ」
「失礼ですが、どのようにして手に入れられたのですか?」
「それを聞いてどうする?俺は言わんぞ、口が裂けても!」