第2章 過去編
当時私は一人の男性と愛し合っていた
兵士たる者いつ死んでも可笑しくは無い為、どちらかが残された際に足枷にならないように結婚はしないと決めていた
私たちはお互いを必要とし信頼し心から愛し合っていた
彼は部下の死を自分の罪だと背負い続ける私をいつも優しく諭してくれた
「彼奴らは元より人類に心臓を捧げた兵士達だ。彼奴らの犠牲により今の俺達は生きている。彼奴らは無意味に死んだ訳ではない。それは、お前も分かっているはずだ。彼奴らが果たせなかった後悔の念を代わって俺達が引き継いで行かなきゃ、彼奴らはただの犬死になる。
だから、彼奴らの事を忘れろとは言わない。ただ、死んだ奴は残された奴の心から忘れ去られた時に初めて死ぬと聞く。だからお前は決して彼奴らが此処で共に戦っていたという事を忘れてやるな。」
私はこの彼の言葉を聞いて前を向き続ける事が出来た
彼には沢山助けられた
それは感謝してもし切れないほど
だから今度は私が彼を守る番だ
壁内へ戻ったら2人でまた幸せに暮らせて行けたらいいなぁ
来年の春にウォールマリアの小高い丘に咲く”サクラ”という東洋の木をもう一度2人で見たいね
その時には私達もまた歳を重ねるけどいつまでも2人でいようね
彼はそういう私に優しく微笑んでくれた
それは私の大好きな彼の最期の笑顔だった