第2章 逢魔が時
ドクッドクッと咲の心音が大きくなる。
一体どんな姿の鬼なのだろうかとゴクリと唾を飲んだ時、箱の中からひょっこり顔を出したのは、とても可愛らしい顔立ちをした小さな女の子だった。
「!?」
自分の頭の中にあった想像とあまりにも異なる姿に、咲は思わずズルリと拍子抜けしてしまう。
小さな体に麻の葉柄の桃色の着物がとてもよく似合っていて、その姿はまるで人間の子どものように見えた。
これが……本当に鬼?
そう思ってさらにまじまじと見つめた時、咲は気がついた。
口にしっかりとはめられた竹の口枷と、もみじの様な小さな手の先に伸びる鋭い爪の存在に。
「咲、俺の妹の禰豆子だよ」
箱の中から這い出してきた禰豆子を、炭治郎が笑顔で紹介した。
「禰豆子ちゃあ~ん、今日も相変わらず可愛いねえぇ~」
善逸が溶かされたような声を上げてくねくねと身をよじるが、それには頓着していない様子で、禰豆子はそのぱっちりとした瞳で咲を見つめると、トコトコトコと長い黒髪を揺らしながら咲の元へと近づいてきた。