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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第18章  共に







桜が庭一面を淡い色で染める中、産屋敷家の広い座敷にはずらりと柱の面々が居並んでいた。

だがその席は八つしか無い。

残りの一席、炎柱・煉獄杏寿郎の席は、座敷内の最も上座にあった。

黒五つ紋付き羽織袴を身にまとい、端座した膝の上に握った拳を置いて、彼は座っていた。

そしてその隣には白無垢姿の咲が、綿帽子の下で鮮やかな紅色の唇で穏やかに微笑んでいた。

その二人の姿は、まるで絵巻物の中から抜け出てきたかのようである。

「高砂や、この浦舟に帆を上げて、この浦舟に帆を上げて、月もろともに出て潮の……」

杏寿郎に次ぐ上座に控えていた産屋敷耀哉が、普段の柔らかな声色とは打って変わった腹の底から響いてくるようなずっしりとした重みのある声で謡い出す。

その祝いの謡を聞きながら、一同の末席に連なっていた炭治郎は、両目に涙を浮かべたのだった。

あの戦いから一年。

今日、この春の日に、杏寿郎と咲は祝言を挙げる。

一時は生死の境を彷徨った咲も、奇跡的な回復を見せて数ヵ月後には無事に退院し、そのまま煉獄家へと迎えられた。

すでに婚約は済ませていたということもあり、早々にお館様への報告に上がった二人に、耀哉は祝福の言葉と共に、産屋敷邸を祝言の場に提供することを申し出たのだった。

そういった経緯で、今、このような状況になっている。

槇寿郎と千寿郎が見守る中、三三九度の盃も無事に交わされ、杏寿郎と咲は頬を染めてお互いを見つめると、にっこりと微笑んだ。

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