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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第18章  共に




激痛と急激な出血により気を失っていた咲は、しばらくして目を覚ました。

遠くの方から大勢の人の声が聞こえてくる。

きっと、群がってくる鬼と戦っている剣士達の声だ。

咲は右手で地面を押して立ち上がった。

「今度こそ…アイツを、絶対に、逃がさない……!!」

痛みで朦朧とする中、それでも意識を保っていられるのは、あの鬼への強烈な復讐心からに他ならなかった。

腕を喰われ大量の血を失い、いつ死んでもおかしくない状態の咲を奮い立たせているのは、あの鬼への憎悪だった。

一歩、一歩と、鬼と不死川が消えた方角へと歩を進める。

歩くたび、不死川が巻きつけてくれた羽織から赤い雫がポタリ、ポタリと地面を濡らして、真っ赤な道を作っていく。

切断された左腕からは、何と表現したら良いのか分からないような強烈な痛みが、肩を、心臓を、喉を伝って頭に響いてくる。

だがそんな痛みを噛みちぎるように、歯を食いしばって咲は歩き続けた。

自分は体が小さい。

このまま歩き続ければ、出血多量でいずれ死ぬだろう。

だけど今動かなくてどうする。

やっと仇に巡り会えたのだ。

以前遭遇した時は、あれほど討ちたいと切望していたにも関わらず、自分は何もすることが出来なかった。

あれほど鍛錬を積んできたというのに、何の役にも立たなかった。

きっと…今もそうなのだろう。

あれからも鍛錬を続けて、小刀と拳銃の能力も身につけた。

だがどれだけ頑張ろうとも、鬼殺の剣士になれる人間とそうでない人間の間には、決して渡ることの出来ない大きな川が流れているのだ。

きっと自分は、例え片足を失っていなくても剣士になれるような才覚は無かったに違いない。

仇を討つどころか自分は、自分の身を守ることすらできなかった。

鬼にみすみす栄養をくれてやり、結局は鬼殺の邪魔にしかならなかった。

手負いのこの状態で鬼に向かって行っても、今度こそ殺されて喰われるだけかもしれない。

(だけど……)

私は今、あいつのところに行かなければならないんだ。

あの鬼を絶対に殺さなければならない。

今回は不死川さんがいる。

私じゃ取れない首も、不死川さんなら取ることができる。

少しでも役に立つんだ。

例えこの身を囮にしてでも。

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