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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第13章  小刀と拳銃



脳みそがぐるんぐるんと回っているような気がする。

肺も心臓も今にも破裂しそうだ。

胃の中の物が今にも逆流してきそうな気配がする。

はっきり言って、気分も状態も、何もかもが最悪だった。

それでも咲は、懸命に足を前に踏み出して走った。

もうほとんど歩いているくらいのヨタヨタとした緩慢な動きになっていたかもしれないが、杏寿郎の姿だけを見つめて、必死で足を動かし続けた。

ふらり、ふらり、と気力だけで進んできた咲が、腕組みをしたままじっと待っていた杏寿郎の目の前に到着する。

「ひゃ、ひゃく周、終わり、ましたっ」

息も絶え絶えになって言った咲の体を、杏寿郎はガバッと腕を回して抱きしめた。

「うむっ!よくやったぞ、咲!!よくやったっ!!」

杏寿郎はそのまま咲を抱え上げる。

「よし、少し休んだら、次は素振りだ!!」

「は、はいっ」

返事をしながらも、咲は内心青ざめた。

まさに鬼のような厳しさである。

だがそれがまた、自分の心を奮い立たせるのも感じているのだった。

鬼殺隊において「弱い」ということは即ち「死」を意味することだと杏寿郎はよく言っていた。

だから、共に鍛錬を受けている千寿郎同様に、自分のことも絶対に死なせまいとして厳しく訓練をつけてくれているのだと、咲は理解していた。

本気で自分の身を案じ、鬼殺の剣士になれるようにと思ってくれているがゆえ。

だからこそ自分も、全力でそれに付いていこうと思えるのだった。

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