第2章 逢魔が時
「たんじろぉ~、早く町に戻って宿に入ろうよ~」
ここは町から少し離れたところにある森の中。
情けない声を上げたのは、鬼殺隊隊士の我妻善逸だ。
弱々しい振る舞いに反して、見事なまでに金色に染まった彼の髪の毛は驚く程派手である。
だがこれは生来のものではなく、雷に打たれたせいで後天的に変化したものらしい。
すぐに弱音を吐くし、戦いの場では常に泣きべそをかいているが、女の子を守ろうという気持ちだけは人一倍強い少年だ。
「そうだな。もうすぐ日も暮れるし、早く帰って休もう」
ニコニコと太陽のような笑顔を浮かべてそれに応じている少年は、竈門炭治郎。
背中には霧雲杉で作られた箱を背負っており、中には妹の禰豆子が入っている。
彼女は鬼舞辻無惨の襲撃により鬼に姿を変えられてしまっており、炭治郎は禰豆子を人間に戻す方法を探すために鬼殺隊に入隊し戦いを続けているのだ。
「晩飯は天ぷらを食うぞ!!」
猪頭の少年が、二人の会話を聞いているのかどうか、その色白の肌には似つかわしくないほどに鍛え抜かれた筋肉質な両腕を振り上げた。
彼の名前は嘴平伊之助。
常に猪の被り物をして行動している変人だ。
一見異様に見える彼だが、その被り物の下には可憐な少女を思わせるような端麗な顔が隠されており、被り物を外した際には、必ずと言っていいほど二度見されている。