第4章 薔薇を塗ろう トレイ・クローバー
ー翌日ー
私はグリムの気を逸らすために夜中、ツナ缶を置いてオンボロ寮を出た。
鏡の間へ着いて、大きく息を吐き出す。
ーみんな、ありがとう
扉を開けると、無数の鏡が宙に浮いていた。
その中で私が見つけた金の縁をした帰れる鏡を探す。
「あった」
一旦、鏡に入ってしまうとまた戻れるのは1分以内。
その1分さえ耐えてしまえばいいのだ。
私は鏡に手を伸ばし、そっと指先を合わせると、泥に手を突っ込んでいるような感覚でどんどん手が吸い込まれていった。
そして、全身が吸い込まれていき、私は街の裏路地に尻もちをついた。
「も、戻ってこれたぁ…」
ホッと安堵のため息をついて、目頭が熱くなった。
これでお母さんに会える。
刹那、心臓が大きく震え、ぼうっと大きく私の心の中で緑色の炎が揺れる。