第1章 眠っている貴女を ジェイド・リーチ
「おや、監督生さん」
モストロラウンジの扉からひょっこりとアズール先輩が顔を出してきた。
「あ、アズール先輩!実験お疲れ様です」
「実験…?」
アズール先輩は一瞬怪訝な顔をして首を傾げたが、フッと息をついて笑った。
「あぁ、実験なら…もう終わりましたよ、ねぇジェイド」
「…さぁ、どうでしょうか」
ジェイド先輩は私が聞いたことないような低い声を出す。
ー不穏な…空気?
私は胸騒ぎがしてくるりと後ろを振り返り、ジェイド先輩の顔を覗き込んでみるといつもの優しい微笑みを向けてくれた。
「フロイドもいませんし、ゆっくりなさってくださいね」
そう言うとアズール先輩はスカーフを巻いて、私たちの横を通り過ぎていった。
モストロラウンジの中に入ると、いつもはお客さんでいっぱいの店内には私とジェイド先輩しかいない。
何個もある紫色のソファも空っぽで、何だかソワソワしてくる。
「こちらに掛けていてください」
私はジェイド先輩に促されてソファに座った。
しばらくジェイド先輩は厨房に篭っていて、包丁の音だったり、パスタを茹でているであろう音がしている。