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[おそ松さん][カラ松][18禁]海王ポセイドン

第2章 人魚との遭遇


「私は元々死ぬつもりであの船に乗ったの」

彼女は懺悔でもするかのように話し出す。

「毎年海の神に捧げる供え物がなくなって、その時私が供え物のそばにいたから私のせいだってことにされて…罪滅ぼしに私が捧げられるはずだったの。でも長老がみんなを引き留めて、牛を捧げることになって…。私は村を追い出されてさまよって、行く先々で余所者だって言ってひどい目に合わされて……」

話しながら涙をぽろぽろこぼす。

「どうせ死ぬなら最期に贅沢しようと思って、あの船に全財産はたいて乗り込んで、途中で飛び降りるつもりだったのよ?まさか爆発するなんて…」

「船は…どこにあったんだ?」

「アカーツカ港の新しく出来た波止場よ」

ポセイドンは深いため息をついた。

「あそこは…海の精霊たちの、縄張りだ。恐らくあいつらの…仕業だろう、な」

「そう言えば進水式の時、大きく傾いてたわ。戻る時の反動で、どこかにぶつけたみたいだった」

「間違い、ない…」

「少し休んで?まだ辛そうよ」

「そうもいかない、さ。君をどうするか…、まだ決まってない」

「それって…?」

「今はここを、空気で包んでいるが…、本来なら海の底だ。さっき死ぬために…船に乗ったと言ったが、今でも死にたい気持ちは、変わらないか?もし嫌でなければ、俺の……」

そこまで言って顔を赤らめるポセイドン。手をモジモジと動かしている。

「俺の妃に、なって欲しい…」

ようやく紡がれた言葉。だがずっと海にいたポセイドンにとって、精一杯のプロポーズだった。出会いがないわけではない。海の精霊には女性もいる。だがポセイドンの心はあの時の人魚に傾いていた。それが人間の死体だと気づいた今は、目の前の彼女に向けられている。

「海の中で暮らすのよね?」

「ああ。妃になれば、海中でも…息が出来るように、してやる」

「もし断ったら?」

「………君の記憶を消して、地上に戻す」

その言葉はかすれていた。帰したくない、別れたくない。でも彼女の気持ちは優先してあげたい。戻りたいというならば、自分のことは忘れた方がいい。そう考えた。

彼女もまた考えた。一文無しで住む場所もないが、少なくともポセイドンは自分に好意を持ってくれているし、自分が怪我をするのも構わずにかばってくれた。周りにいるのはイルカや魚たちだ。もう1度やり直せるかも知れない。

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