第1章 木ノ葉の里
「あっ!」
「うわっ!」
正面から衝突して二人はその場に倒れた。
「…ってぇ…」
腰を押さえながら起き上がったのは、今期卒業生のサスケだった。食休みに外を散歩していたようだ。反動で後ろに倒れたシズクもすぐ起きて謝罪する。
「ご…ごめんなさい!えっと…お願い、かくまって!」
初対面の相手だが今は緊急時だ。厚かましくもお願いをして、シズクは建物の脇に置いてあった空樽の中に身を潜めた。
「は?おい…」
ほどなくして追いついたセツナが、呆然とするサスケを見つけ尋ねてくる。
「おい!この辺で女の子見なかったか?ショートパンツのカワイイ子!」
「…そいつなら……向こうへ走って行った」
「結構早ぇなぁ…あ、さんきゅ!」
あさっての方向を指し示すサスケに手を上げて、セツナは再び走り出した。その様子を確認し、ごそごそと樽から這い出るシズク。
「どうもありがとう。ぶつかっちゃってごめんなさい」
シズクは改めて頭を下げたが、サスケはあからさまにぶすっとして黙っている。そのうち凄く迷惑だったと言わんばかりに、自分の服の裾をパン、と汚れを落とすように叩き始めた。
「だ…大丈夫?ケガは?」
おろおろし始めるシズクをちらっと見やるとすぐ目を伏せ、サスケは静かに吐き捨てた。
「怪我はしてないが、今度から逃げる時は周りにも気を配ることだな」
「はい…ごめんなさい」
反省しきりのシズクに背を向け彼は立ち去っていった。
「あれー?さっきの可愛い子!」
「さっきの…粘着軟派男!」
午後になり担当上忍を交えての各班ごとのミーティングが始まる。
集合場所に着いた途端シズクは愕然としてしまった。なんと、先程散々追いかけ回してきたセツナがメンバーの一人だったのだ。何のためにあんなに走り回ったのか、苦労が水の泡だ。
「…フッ、ほらな。オレからは逃げられないぜ」
キザな台詞で格好つける彼を前に眩暈がしてきた。
…うう……最悪。