第1章 木ノ葉の里
木ノ葉隠れの里では、忍者アカデミーの卒業生達への説明会が行われていた。これから下忍として様々な任務をこなしていく、その為の班分けメンバーがイルカから発表され、教室内に一喜一憂する者達の声が響き渡る。
「午後からは担当の上忍の指示に従って行動してもらう。以上、午後まで解散!」
遅ればせ卒業試験を受け合格したシズクは別室で説明を聞き、今期卒業生達と同様に午後まで自由行動となっていた。学校を出て昼食を摂るため通りの店を物色する。
「木ノ葉の里って、広いなぁ…」
シズクは木ノ葉隠れの里の者ではない。自分のいた里は戦争で壊滅してしまった。故郷を失った戦災孤児のシズクを、木ノ葉隠れは事情を考慮して拾ってくれたのだ。
すると見慣れない顔が気になるのか、数人の男子がシズクに近付いて来た。
「先生が言ってた、シズクちゃんだよねー?」
「お昼まだ?オレらと一緒に食べよーよ」
「…ううん、遠慮しておきます」
首を振ってあっさり拒むも、向こうはムキになってこちらの腕を掴んでくる。
「なにその態度、美味い店教えてやろうと思ったのに」
「何やってんだよ」
そこへ、同じ卒業生なのか一人の背の高い男子が現れた。低い声を発しシズクに絡んでいたグループを睨み据える。
「ちっ、セツナだ」
「…行こうぜ」
彼等は舌打ちしながらそそくさと足早に去っていった。その様子を見届け、セツナと呼ばれた男子がこちらを振り返る。
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をしたシズクだが妙な視線を感じ顔を上げると、助けに来たはずのセツナが目を輝かせにじり寄って来る。
「……あんたさ、可愛いね。じゃオレとメシ食いに行く?」
猛然と追いかけてくるセツナから全速力で逃げるシズク。
「待てーー、逃げなくたっていいだろおぉーーっ」
「まだ追ってくる…っ」
彼の追跡から逃れようと先程から走り続けている。シズクは息が切れてきたのに向こうは疲れた様子もない。セツナを巻くため、あえて細い路地へ入って行く。ところが建物の角を曲がった直後、思いきり人とぶつかってしまう。