第21章 in the silence
「わかった…」
あきらめたアルコは眉を寄せ、一瞬自由になった両手で口一の顔を挟むようにとらえて胸から引き剥がし、鼻先があたる距離で、懇願した。
それは、今までのセックスの際には 一度も口にしなかった言葉だった。
「…やめないから…、
じゃあ………もう濡れてるから…
『触って』」
「!」
──── アルコの初めての提案に口一は思わず絶句した。
アルコは、今までできるだけ前戯を拒んできた。
口一は自分に快楽を求めているだけ
射精の快楽を得たいだけ
だから前戯なんて必要ない
そう思っていた。
だから前戯には、ほとんど応じてこなかった。
『濡れてるから………』
その後に続く言葉は
『もう必要ない』
『もう触らないで』
『もう挿入すればいい』
アルコは この夜、初めて口一を前戯を受け入れた。
口一は驚きの表情を解いて、片ほほを上げた。
「いいのか」
「触るだけだよ。舐めたら……………殺す」
解放された上半身を起こして、もはや意味をなしていていないレースのショーツを脱ぎながら、上目遣いで笑い返した。