第1章 止まれこの想い『宇髄天元』
私には最近、大きな悩みがある。
「そう!それで天元様が頭ぽんってしてくれたの!ぽんって!」
「はぁ?そんなのあたしだってあるわよ弱ミソ!」
「あぁぁ!またまきをさんが弱ミソって言ったぁぁ」
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いてっ...」
これはきっと、一年前までは普通の光景だったのだろう。
須磨さんとまきをさんが喧嘩をして、それを雛鶴さんが止めに入る。
それが、普通の光景だった。
だけど今は。
「そうだよっ、二人とも今ご飯の時間だからっ...!」
こうして、「四人目の嫁」として天元様の家族になったひとりの女。
それが私だった。
私がそう言うと二人も我に帰ったようで、はっとお互い顔を見合わせるとバツの悪そうな顔をしてまたご飯を食べ始めた。
「ふふ、やっと落ち着きました」
そんな二人の様子を見てにっこり笑う雛鶴さん。
それにつられて私もにこりと笑った。
でも次の瞬間。私の頭はまた違うことに占領されるのだ。
「そういえば、天元様もうすぐ帰ってきますかー?」
「!」
「...確かに、少し遅い気がします。」
それにいち早く反応したのは雛鶴さん。
そしてそれに加えてまきをさんも心配そうな色を顔に浮かべる。
「天元様なら大丈夫だと思うけど....」
(たしかに、ここ最近帰ってくるのが遅い....)
でも私にとっては。
天元様がいないほうが、心が楽だった。
だけど今度は須磨さんが泣きそうに声を上げた。
「うううぅ、最近天元様帰りが遅くて寂しいで....」
その時。
ガラッ
「「「「!!」」」」
その玄関を開ける音に全員が反応する。
そしてその次の瞬間に大好きな人の声が聞こえてきた。
「嫁たちよ〜帰ったぞ〜」
「天元様!!」
その声に一番早く反応したのは須磨さん。
その次にまきをさんも出ていき、雛鶴さんも嬉しそうに腰を上げた。
そして最後は....私。
ゆっくりと腰を上げると、天元様がいるであろう玄関へと向かう。
そして玄関につくと。
会いたくて会いたくて仕方なかったはずなのに、どこか帰ってほしくないと思ってしまう、そんな私の想い人が立っていた。
既にみんな天元様に抱きついていて、それを天元様が優しく撫でている。