• テキストサイズ

もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第10章 落魄



だから……

やっぱりもう逢うことはできない。

永久に…………




流れゆく雲を見上げながら、そう思った。




毎日、毎日、心で言い聞かせていないと、
夢遊病者のようにフラフラ翔に逢いに行って
しまいそうになってしまう。



「翔先輩、驚異的な快復力だって……
リハのドクターも監督も驚いていたよ……」

背後で雅紀の声が響いた。

五十嵐でも、もっとも忙しい会長は
つい昨日も大学まで足を運んで
様子を見てきてくれたのだ。

「筋トレも始めたようだし。
普通の生活をしている分には支障は
ないって…。」

「でも、まだ走ったりすることは
無理ってこと?」

「無理じゃないけど……
筋肉を戻すのが先なんだって。
本人もそんなに焦っている様子はなかったよ。

黙々とトレーニングメニューをこなしているって
感じだったよ。」

「そっかぁ…」

少なくとも生活に支障がないと聞いて
一安心したものの、問題はサッカーができるか
どうかということなのだ。

キズ跡は痛まないだろうか?
本当に神経の損傷はなかったのだろうか?

たとえ完治しても、一ヶ月ほど練習から
遠ざかっていたのだから
筋肉も間隔も落ちてしまっているに違いない。

すべてが元通りになるには
かなりの時間が必要となるだろう。

そして、当然ながら、クラブチームとの
契約の話は流れてしまった。

以前のような他を圧倒するほどのパワーを
取り戻し夢に向かって再チャレンジするために
どれほどの回り道をさせてしまうのだろうか?

これじゃ翔の妹の時と同じじゃないか………
自分の罪を人に押しつけて
ただ、逃げているだけの人間と……

/ 238ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp