第5章 ①明治トリップ女子、最強の狙撃手に溺愛される
「冷える」
短い一言の後に、結局尾形も横になった。
さっきより温かくなったが、結果。
「狭いです!」
杉本が笑う。
「守られてる証拠だ」
尾形は横になりながら、自然な動作で和栗の背にそっと手を回す。
「……尾形さん」
「敵が来たら起こす」
近距離の中、歩兵銃はしっかりと前に抱いている。
安心と緊張が混ざる。
反対側の杉本も遠慮がない。
「和栗さん」
と呼んで、額に軽く触れる。
「……何かあったら、俺を先に呼べ」
謎の対抗心むき出しで、尾形の腕がわずかに強まる。
「必要ない」
「あるだろ」
「ない」
和栗が眉間に皺を寄せる。
「……二人とも…寝られません」
ドキドキし過ぎて、とは言わないでおく。
「あ、ごめん」
杉本が申し訳なさそうに軍帽を被り直す。
寝る時も帽子を取らないらしい。
彼の本体とでも言うように。
小さく息を吐いた尾形の腕は離れない。
そろそろ心臓が限界だ。
けど…あれ…?
なんか、あったまってきた…かも…?
パチパチと弾ける焚き火の音も心地良い。
「ん?和栗さん?」
そっと背中に話しかける杉本に、尾形がシッと言った。
和栗の肩が、規則正しく上下にゆっくり動いていた。
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一方その頃、現世。
自動ドアが開くと、三人同時に身構えた。
「オオイ!扉が勝手に開いたぞ!?」
白石が一歩下がる。
「そんなに驚くな白石。
両側から誰かが扉を開けて、私達を迎えてくれただけだ」
始めは警戒したアシリパも、何も起こらないことに安堵した。
「ニビ……ンコ?」
谷垣が上の看板を読んで困惑する。
「違う、コンビニだ。」
常丸要太はハァとため息をつきながら眼鏡を直し、訂正する。
まさかアシリパ達のトリップ先が、和栗の勤務先なんて夢にも思わないだろう。
助手と入れ替わりのように、閉院した歯科医院に入ってきた彼ら。
数日前から面倒を見ているが、はて、いつまで続くやら。