第5章 愛しのパパから贈り物
「カタクリ、餅を持ち歩いているのか?」
「もち?」
なんで?と首を傾げるカタクリに、クマラもはて、と首を傾げる。確かにカタクリの服の間からコロリと落ちた餅を掌で転がしてより一層首を傾げた
隠し持ってるんじゃないか?とカタクリを抱き上げたクマラに対し、今日一日で介抱され、ムニムニされ、抱っこまでされたカタクリは嬉しさのあまり照れて、ギュッとクマラの手を握る。その途端、その握ったカタクリの手からボロボロと小さな餅が生まれ落ちた
「……カタクリは餅みたいだな」
「……」
突然自分の手から生まれた餅に困惑する中、自分の手の間に挟まった餅をぱくりと口にするクマラ。自分から生まれた餅を食べられてカタクリはびゃっ、と肩が震えた
「美味いぞカタクリ」
「う、うまぃ……」
色んなことがあり過ぎて処理が追いつかないカタクリに対し、クマラはそっとカタクリを膝に戻して餅の片付けに入る。床に落ちてしまったものは仕方ないので、南無と手を合わせてゴミ箱に捨てた。クマラの足やオーブン、ダイフクが落ちるのを防いだ餅は彼らの口に入る
「通りでモチモチなんだなお前は」
「あ、あう……」
親愛なる父からの接触に、カタクリは背筋がゾワゾワする感覚を覚えた。妙に熱っぽい身体がむず痒い。父の息遣いが近くで聴こえる度、カタクリの瞳は潤んでいった
カタクリが限界を訴えると、何かしてしまったかと不安になったクマラはそっと空きスペースにカタクリを寝かした。余韻が残っているカタクリを他所に、ダイフクはうんしょうんしょとカタクリが座っていた場所に移動する
「パパ、俺なんだろな」
「この感じ自然系や動物系ではなさそうだからな……」
どこか身体の変化がないかと体を摩るクマラに、ダイフクは擽ったいと笑いつつ近くとティーカップに手を伸ばすのであった
この後、カタクリの食べた悪魔の実には“モチモチの実”。オーブンの食べた悪魔の実には“ネツネツの実”という名がついた。どれも全てクマラが考えた適当なものであるが、この時代に初めて見つかった悪魔の実としてはこういったわかりやすいものでもいいだろうというクマラの意見が反映されている。子供達も覚えやすいだろう、と
ダイフクは結局、なんの能力か分からず終い……