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キメツ学園【鬼滅の刃】

第17章 灯籠


ガラスの向こうの炎は、私の記憶を焼き付くしてしまいそうだった。

日に日に大きくなっていて、まるで、向こう側の私を消してしまうようだった。


『…また来たのですか』

「……あれ?なんか、ここに来ちゃいけないタイミングで来ちゃった気がする。」

『………そう』


向こう側の私はいつになく元気がない。


「今回は用件が短いよ。あのね、しのぶちゃんって子に会ったの。」

『……!!』

「カナエの妹よ。じゃ、言うね。」


私はしのぶちゃんの伝言を一言一句違わずに伝えた。


『……………』

「……泣いてる、の?」


向こう側の私の目に光るものがあった。


『いいえ…。』

「…泣きたいときは、泣いて良いんだよ。」

『いいえ、泣きたくないんですもの。』


向こう側の私は頑固だ。


「ねえ、このガラスって割ることができるの?」

『…わかりません。』

「あなたは前に手をこっちに貫通させた。きっと私もそっちに行けると思う。」

『……こちらに来たいと言うのですか』


炎が燃え盛る。
向こう側の私は目を見開いた。


「だって、あなた」

『……』

「………このままじゃ、消えちゃうんじゃないの…?」


炎が激しくうねり、向こう側の私を飲み込もうとしているようだった。


『時がたてば、忘れ去られた記憶は劣化します。私は本来、あるはずではない記憶…。』

「……いいの?本当に、それでいいの?」

『………。』

「いつなの?いつあなたは消えちゃうの?」


向こう側の私は少し時間をおいてから答えた。


『……あなたが、次の誕生日を迎える頃に。』

「…それって…!!」


私は三月生まれだ。今は十二月だから…。


『……やっと…終われます…』

「うそ、そんなの、私認めない!!」

『…終わるのです、これで、私は…父親から解放される……』


向こう側の私の本音。

そう。私は、ずっと、父親のことを引きずっていた。愛されなかったこと、襲われたこと、子供を妊娠させられたこと。

強い憎悪、嫌悪。全ては、父を殺したあの日から。


「待って!!行かないで!!父さんは…お父様は、あなたを……ッ!!」


嫌だ。こんなの、こんなの認めない。あなたが一番嫌だったお父様との幸せの時間、全部私が持ってるんだもん。

このまま、あなたに消えてほしくないよ……!!
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