第7章 油断大敵
思い当たった言葉に思わず顔を顰めていたら、安室さんの腕が離れて解放された。
その時に聞こえた「これ以上はたつ」という言葉は聞こえなかったことにしよう。何がたつというのか。深く考えるのはやめよう。
「んっと、よくわからないけど、どういたしまして?」
たぶん魘されてたことを理解しているだろう安室さんにそう告げれば、一瞬目を見開いてから、神々しいスマイルの後に、頬に、何か温かいものが触れた。
それが安室さんの唇だと気付いたのは、安室さんがベッドから降りて洗面所に向かってからだった。
な、に。
さっきのは。
何が起こった?
頬に手を当てて考えても答えが出てくるはずもない。
けれど、いつも意地の悪い笑顔を見ていたけれど、あんな顔も出来るのか、と心のどこかで冷静な自分が考えていた。
あれは胡散臭い笑顔ではなかった。
ただ、その顔が向けられる意味が分からなかった。