第5章 甘味屋での甘い休息
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部屋に戻った茜は、机に向かい頬杖をつきながら書物を開いていた。
光秀のいない座学の時間は、少しつまらない。
文字が視界を滑っていくばかりで、頭には何一つ入ってこない。
茜の中で、光秀の印象は出会った頃と全く違う物になっていた
光秀のことを、今では嫌いではない。
だからこそーーー
自分の知ってる歴史とは違って欲しい。
裏切りの噂は事実無根だといい–––そう期待してしまう。
あの意地悪で、考えが読めない、だけど本当の光秀は自分が思ってた人間とは真逆の人間なんではないか
そう思ってしまうのだ
そこまで考えて、茜はいつの間にか、光秀のことばかり考えていることに気がつき、顔をあげた。