第5章 甘味屋での甘い休息
「み、光秀殿、先ほどの言葉は、その……っ」
私に腕を振り上げた男が、拳を掴まれたまま顔面蒼白でしどろもどろになっている。
それとは対照的に、涼しい顔した光秀さんはどこか愉快げだ。
「俺は何も聞いていない。お前たちも、この娘とは何ごともなかった。そうだろう?」
「は、はい!」
「ならば、お互い忘れるとしよう。何、狐にでも化かされたと思えばいい」
笑みすら浮かべる光秀さんは低い声で囁き、掴んでいた拳をパッと放す。
「!?」
勢い余って盛大に尻もちをついた武士は、目を白黒させた。
「っ、失礼いたします……!」
先ほどまでの威勢はすっかり消え、武士たちはビクビクしながら退散した。
(助かった……)