第1章 こんにちは
「み、三日月様?」
三日月様が泣いたことにびっくりしたこんのすけと私は固まってしまった。
三日月様がゆっくりと口を開いて問う。
「なぜ、なにゆえ俺に構う。こんなに醜い俺は審神者にとって価値の無いものだろう?なぜ、なぜ!」
三日月様は声を荒げながら泣いた。
だが私は三日月様が今言ったことは心に浮かばなかった。
「......三日月様、私はそうは思いません。私の目には三日月様が美しく写っています」
驚いた様子で目を見開いた三日月様は少しの間固まっていた。
そしてうつむき黙ってしまった。
「......なにゆえ、今の俺が美しいと?」
長い沈黙の後三日月様はそう問うた。
「それは、............三日月様の涙が美しいからです」
三日月様の涙は月光に照らされた夜露のように静かに美しく煌めいていた。
絶望にうちひしがれ堕ちようとしている今この瞬間でさえもこんな涙を流す、三日月様はどんなときでも美しく気高い存在なのだと実感させられた。
呆気にとられたように呆然とする三日月様の周りにはもう禍々しい邪気はなかった。
美しい三日月宗近様が涙を流し佇んでいた。