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君がため【鬼滅の刃】

第4章 君が笑顔の日【不死川実弥】




それから本格的に悪阻の症状が出始め、眠気と吐き気でひと月程床に伏せったまま、ほぼ何も出来ず布団と厠を行き来する日々が続いた。

あの産婆さんはなんと、あまね様のお子様方を取り上げられた人だというので…恐縮してしまった。

そして、どこからともなく「風柱様の奥方が懐妊」と話が広がり柱の皆様からお祝いが届いた。


恋柱の甘露寺様から大量の産着が贈られ、音柱の宇髄様からは滋養のつく食糧がこれまた大量に贈られた。


『…でんでん太鼓…ふふっ』

水柱の冨岡様からでんでん太鼓が届いた時は思わず笑ってしまった。

「あの野郎……どんな顔して、これ買ったんだァ…」

でんでん、と鳴らしながら実弥様が訝しい顔をしていた。





悪阻もようやく落ち着き始めたある日。

胡蝶様のお屋敷で産婆さんに診て頂いた帰り、蝶屋敷を出たところで声をかけられた。

「あのっ!!…風柱様の、お…奥方様…ですか…?」

鬼殺隊の隊服を身に纏う大きな体躯に、実弥様によく似たお顔立ち。……会ったことはなかったが、実弥様の弟の玄弥さんだと一目で察した。

『はい、…玄弥さん…ですね?』

「!!…俺のこと、知って…?」

『存じております。…実弥様の、たった1人のご家族ですもの。』

「…いや…、俺…」

弟なんていないと日頃から豪語なさってはいるが、その実…

誰よりも玄弥さんを想いながらも、それを悟られぬよう振る舞い必要以上に突き放しているのを私は知っている。

何度かご家族の話をして下さった事があったが、とりわけ玄弥さんの話をなさる実弥様のお顔はいつも優しかった。


『初めまして、ですね。お会いする事が叶わずご挨拶が遅くなり申し訳ありませんでした。』

「いや!!そんな…、俺の方こそ…。あの…悲鳴嶼さんから兄貴に子どもが出来たって聞いて…」

あまり女性と話すのが得意ではないのだろうか。顔を赤らめながら一生懸命言葉を紡いでくれている。


『…はい。玄弥さんの家族ですよ。』

そっとお腹をさすれば、玄弥さんの視線はお腹に向いた。

「……家族…。」

『玄弥さんの、甥っ子か姪っ子が此処にいるんですよ。』

薄ら涙を浮かべ、口元を綻ばせた。

実弥さんとよく似ている…。



ふと…突然、目の前が暗くなりそのまま倒れ込んでしまう。

遠くで玄弥さんの声が聞こえた気が…ーーした。





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