第3章 私たちには壁がある(XANXUS)
改めて見る頼華の寝顔。こんな陽気だ、こいつの事だから寝てしまうのは仕方ないかとどこか納得している自分がいた。あんなにそばに居たのに。8年という壁が2人を隔てているのか、なんてザマだ馬鹿らしいと独りごちながらふと頼華の頬に手をやる。あぁこんなにも自分はこいつの事が─そう改めて自覚していると
「……ん」
どのくらい自分は眠っていたのだろうか。庭までなら、と外出許可が出たのを切っ掛けにルッスーリアから誘われ庭に来ていたのだとそして自分はそこが大好きな場所でいつしか寝てしまっていたのだと気づいた。目を開けてみるとそこには懐かしい人。ずっと恋焦がれたあの人の姿だった。
「え……」
どうしよう、ルッスーリアは何処に行ったのかと聞き出そうとした時だった。徐にXANXUSに抱きしめられていた。
「……」
「…XANXUS…?」
まるで壊れ物に触れるかのような優しい抱擁。久しぶりに嗅ぐ彼のコロンは彼女の心に溶け込んでいくようだった。XANXUSはといえばただ黙っていただけだったがふと口を開いた。
「…頼華」
愛しい声で紡がれる己の名前に泣きそうになる彼女。あぁこの人はこんなに温かかったと背中に手を回せばそれを了承したかのようにXANXUSに強く抱きしめ返された。
「っ…XANXUS」
「…どうした」
「ずっと……ずっと待ってたよ」
「…あぁ、待たせた」
いや、待たせすぎたな、と体を離し頬を撫でながらXANXUSは言う。
「………すき」
「…あぁ」
知ってる。と言わんばかりにXANXUSは彼女に口付けた。無償の愛などいらない、と思っていたXANXUSも彼女からの愛ならばそれもいいかとそう思いながら再び彼女に口付けをした。
私たちには壁がある
──その壁を作っていたのは俺の方だった
幸せそうに笑う頼華と優しそうな表情のXANXUSを本部から見ていたルッスーリア達。あぁその笑顔が見たかったのだと皆がそう思いながら2人を見つめていた。
(さぁーて、今日はお祝いね!)
(やっとくっつきやがったかァ)
(ししし、ボスかっけー)
(ボスと、頼華様が漸く…!)
(レヴィ、君泣きすぎだよ)
(ねぇXANXUS、ずっと一緒にいてね)
(……あぁ当たり前だろ)
end