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Amor vincit omnia__愛の勝利

第3章 私たちには壁がある(XANXUS)




当の本人頼華もこの8年間ずっとXANXUSを待ち続けていたのだ。イタリアに留学してヴァリアー本部に住むようになってから毎日毎日XANXUSの元に通っては今日はベルとスクアーロがまた喧嘩したよ今日は学校で体術があって披露したら皆驚いてたよ、等他愛のない話だ。XANXUSから返事が来ることはなくともただひたすらにXANXUSに話しかけていた頼華の声は眠っていたはずの彼の耳にもどことなく残っていた。
謹慎になってからXANXUSと同じく、いや全くなのだが頼華は自室に篭もり出てくることは無かった。ただただ空を見上げてはまるで賛美歌のような歌声を響かせていた。その歌声はXANXUSだけでなく幹部全員の耳にも入っていて。その悲しそうに歌う唄声が耳をついて離れなかった。だって彼女が歌っていたのは愛の讃歌だったから。
XANXUSは1人そう考えながら暫くして重い腰を上げゆっくりと扉の方へ歩き出した。歩き始めはゆっくりだったものの、どことなく少し早くなっていくXANXUSの足取り。

「…ししし、やっと頼華が笑えるな」
「…これで僕も一安心さ」
「珍しいよなー、マーモンまで動くなんて。
お前金ねーと動かねぇじゃんか。」
「ム、失礼だなぁ。…僕だって頼華にも
ボスにも幸せになって貰いたいからね」

これで頼華が笑えるようになるのなら僕はそれで構わないさとXANXUSの出ていった扉を見つめる2人の眼差しはとても優しいものだった。

XANXUSが庭に出てみると庭の中央に植えられているイタリアカサマツの元にいる頼華とルッスーリアの姿を見つけた。

「…寝てんのか」
「あらぁボス、丁度良かったわ!」

すよすよと安らかな表情で眠る頼華。そうだ、こいつは小さい頃からこの場所が好きだったなと思い出した。イタリアカサマツはよくローマ街道でも街路樹として植えられており幼木はクリスマスツリーとしても使われる歴史的なイタリアのシンボル。その為クリスマスになるとこの大きな木にこれでもかと装飾がされていたものだ。

「食事の準備しなきゃいけないからあとは頼めるかしら」

ボス、とそうルッスーリアが告げるとXANXUSは無言で頷いた。それを確認したルッスーリアは笑顔でその場をあとにした。今日はお祝いかしらねと1人楽しそうに。
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