第7章 漆ノ型. 気付く ~宇髄天元・冨岡義勇の場合~
刹那の言葉を噛み締めるように、何度も反芻する冨岡。
その表情は心做しか柔らかく変わった。
『冨岡様、顔を上げて世界を見渡してくださいまし。何故貴方がそんなにも自信無げにしておられるかは分かりません。只、貴方に救われ繋がれた命がこの世に溢れている事を、お忘れなきよう。』
そう言いくるりと回る刹那。
月明かりに照らされ、美しく笑う刹那の姿に冨岡は魅入られる。
「礼を言う。目が覚めた... 暁天、いや、刹那。ありがとう。」
突然呼び名を変えたのは、刹那を認めたからなのか、
只仲良くなりたいのか。
ぼっちを極める冨岡の考えは分からない。
しかし刹那としては嬉しい限りだ。
『ふふふ、私も名前でお呼びしても?』
「構わない。ところで散歩していると言ったな。俺も一緒に行ってもいいか。」
ぶっきらぼうに言われた誘いに刹那は更に笑みを深くした。
そのまま2人闇夜の散歩を再開する。
冨岡は軽くなった心を、刹那は縮まった冨岡との距離に胸躍らせながら。
しかし、刹那の知らない所で反感の波紋は静かに広がる。