第7章 漆ノ型. 気付く ~宇髄天元・冨岡義勇の場合~
蝶屋敷というのは鬼殺隊隊士が任務で大きな怪我を負った際、療養及び機能回復を行う言わば病院のような場所である。
毎日誰かしら運ばれてくるのだが、今日はいつにも増して慌ただしく怪我人の数も桁違いだ。
「胡蝶様!こっちの怪我人も見てください!」
「重症患者を優先して治療します!自分で動ける軽傷者は待機してください!」
「痛え、痛えよお」
「俺の足が...」
「ううう...」
そこかしこから隊士の呻き声が聞こえる。
異常事態だ。
多数の隊士が来るとは聞いたが、ここまでとは想定していなかった為
流石の胡蝶もイライラしてしまう。
中には軽傷のくせに重傷者よりも先に手当てを受けようとする不届き者まで居るので、無理もない。
「おい胡蝶!こいつの治療頼む!!」
そんな虫の居所が悪い胡蝶の耳に飛び込んできたのは祭りの神、もとい、
音柱、宇髄天元の叫び声だった。
「ああ!もう!どいつもこいつもですよ!順番は守って...って、刹那さん!?」
振り向きざまに悪態をつこうと思っていた胡蝶だが、宇髄の腕の中に居る刹那を見て血の気が引く。
左肩から脇腹にかけて切り裂かれた傷口からは止めどなく血が溢れ、色白の肌は更に青白く見える。