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ナルシサス。【煉獄杏寿郎】

第12章 拾弐ノ型.焦がれる




恋愛事が初めての煉獄にとって、告白など未知の領域だ。


何か変な事を言ってしまっただろうかとか、

強引だっただろうかとか、
浮かぶのは悪い考えばかり。


(うむ、柱として不甲斐ない...)


刹那の事になるといつもこうだ。

刹那に嫌われたくないと言う思いが先行してしまう。


本当なら今よりももっと仲を深めてから伝えた方が良かったのかもしれない。


しかし先日死の淵を見た煉獄は、次があるという思考を一切捨てた。

今伝えなければ、
鬼殺隊柱として生きる以上いつ何時またあの日のようになるか分からない。


だからこそ刹那と過ごす一分一秒刹那の時を、無駄にしたくないと改めて思ったのだ。


が、



(この沈黙は、辛いな...)





遂にいたたまれなくなって目を逸らせば、頬に添えたまま動きを止めた自身の手に刹那の手が重ねられる。


ゆるりとひとなでして、白く細い指が自身の指と絡まった。

予想外の動きに驚き再び顔をあげれば、次は煉獄が息を飲む番。




『馬鹿な人...私はもうずっと前から、杏寿郎の傍に在りたいと思っているのよ...』



切なげな表情でそう言った刹那は、今まで見た中で一番綺麗だ。

言葉の意味を理解した煉獄は綻ぶような笑顔を向け、
もう一度その細い体を引き寄せ抱きしめる。



とくりとくりと重なり合う互いの心音が心地いい。



『好きよ、杏寿郎...貴方が私の最愛の人...』



改めて言葉にされたそれは、じわりと煉獄の心に染み込む。

耳元で囁かれた言葉は熱を含んでいて、相手が煉獄でなければ耐えられなかっただろう。

かく言う煉獄も、相当やられている様子。



「君は、狡いなぁ...」




そう情けない言葉を漏らし、少し体を離してくすくすと楽しげに笑う刹那のおでこに擦り寄った。



幸せに蕩けた紅の瞳が煉獄を見つめて、

煉獄もまたその燃えるような瞳に刹那だけを映す。




『杏寿郎。』


「刹那...」



2人慈しむように呼び合い、



「大切にする...共に生きよう。これから先何があったとしても。」



やっと繋がった互いの想いを噛み締めて、煉獄は刹那の柔らかな唇に初めての口付けを落としたのだった。

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