第9章 玖ノ型. 母襲来
夜も開け、早速というように刹那の見舞いに続々と煉獄邸へと人々が集まった。
大半が刹那への謝罪や感謝を述べる鬼殺隊士だが、中には昨夜隊士達の代わりに街を警備した鬼達もいる。
大小様々な鬼達は口々に刹那を心配する声をあげて、最後にはどう見ても高級な見舞い品を置いていく。
そのお陰で刹那のいる部屋は物で溢れかえってしまった。
当の本人は、何時もと変わらない様子かと思いきやどうもそわそわと落ち着かない。
《母様が来る。》
明らかに原因はそれだろう。
紫苑以外の鬼神達も焦ったようにするものだから、煉獄も緊張してしまってなかなか鍛錬に身が入らない。
やっと人の流れが落ち着いた頃、煉獄邸を訪れたのは柱の面々だった。
皆各々刹那に声をかけ最終的には、鬼殺隊最高戦力が一同に集まる異様な光景が出来上がる。
そんな時だった。
廊下から千寿郎の焦ったような声が聞こえたのは。
「困ります!そっちは今お客様が!」
声と共に開いた襖の奥には刹那によく似た顔の女が立っていた。
藤色の着物を花魁のように着こなし、脚まで伸びた黒髪を揺らしながら涼やかな顔で部屋へと入ってくる。
と、思ったのも束の間。
「刹那!ああ、可哀想に、痛いところはないかえ?気持ちの悪い所は?母は心配で心配で夜も眠れなんだ!」
物凄い勢いで刹那へと詰め寄った。