第50章 過保護亭主
「わっ…!」
「ほら、鍛えたと言ってもこんなやすやすと動きを封じられるんですよ?振りほどけますか?抜けられますか?」
「えっ、ちょ、ちょっと待って…」
「相手は僕より力の強い男性かもしれませんよ?そんな時…叶さん、あなたどうするんです。」
「…ど、どうしたもんですかねぇ…?」
「…ないでしょ、危機感?」
半ば鋭くなった眼光。
ぐぐっと絡む体。肘で邪魔な両腕を避けて頭に触れる。叶の脚の間に膝を割り入れ身動きを取れなくしてしまう。
「こうやって抑え込まれたら。」
「わ!//」
「…それに…動きやすくする為かもしれないですけど、こんなに着物の丈を短くして…」
「!」
「それに……なんですか、お化粧までして、紅まで差して。」
「!え、あ?気付いてくれてた…?」
「阿呆ですか。こんなの、手を出してくれって言ってるようなものですよ…?わかってますか?」
叶の身体を引き寄せて受け止め、抱きしめる。
はあ、と溜め息を吐いた。
「……いざ恋人が強くなっても…いいことないんですね。叶さん、あなたが心配で堪らないです。」
「…あ、あのぅ…///私、行きませんから…」
「そんなこと言ったって…十本刀ならいつ過酷な任務に着くかわからないですよ。せめて僕と一緒なら守ってあげられるんだけどな…僕が遠征に行ってたりしたら…」
「だ、だからあの………嘘なんです。」
「……嘘。」
「嘘って……何がです?単独任務がですか?」
「ええ、まあ…そ、そうとも言う…」
「……」
「そうとも言うんだけど……」
「叶さんあなたもしかして。」
「ひいっ。」
「全部嘘だって言うつもりではないですよね…?」
「そ、そうでーす。宗ちゃん大正解…ドッキリ大成功…」
「…皆で仕組んだとでも?」
「そう、皆でやったから皆が悪い。」
「…でも、主犯は叶さんですよね?」
「……!」
「僕を欺いて、戸惑わせて心配させたことの代償は大きいですよ。けどよかったですねぇ、僕が敵じゃなくて。」
「あ、あの宗次郎…?」
「…甘い罰で済みますからね…?」
→後書き