第23章 はじめての
「しても、いいですか…?」
「……う…ん…//」
「…本当に?」
辿々しく言葉を紡いだ姿を見て、彼女の不安を感じ取ったのか、宗次郎はゆっくりと蛍の顔を覗き込んで。ぎこちなくしている蛍の肩にそっと手のひらを乗せて優しく語り掛ける。
「…大丈夫です。無理強いはしませんよ。」
蛍を安心させたいというように穏やかな笑みを浮かべた。
──その気遣い、そして笑顔が眩しくて、愛おしくて。宗次郎の優しさに包まれた蛍は言葉にならない気持ちを抱きしめ燻らせ溢していく。
肩に置かれた彼の手に己の手を重ねて。縋るようにきゅ、と力を込めて。
「宗次郎…私も…宗次郎とこうなれたらなって、思ってた…」
──不意を突かれたかのように、宗次郎の目が丸くなったけれど、けれどもそれも束の間。また優しい微笑みを向けて、彼女にそうっと近付いていく。
時折震える蛍の睫毛を間近で捉えられるほど接近して。彼女の身体を優しく抱き締めた。
「…っ…//」
「…蛍、大好きですよ。」
ぴくり、と小さく震えた蛍をあやすように、受け止めるように。優しく甘く囁いて。
潤んだ蛍の瞳に映る宗次郎は静かに微笑んで。彼女の瞳がゆっくり伏せられていくのに合わせて目をそっと閉じて──彼女の唇に己のそれを重ね合わせた。
時が止まったような静寂が二人を包む。聞こえるのは互いの吐息、そして触れ合った箇所が擦れる微かな音と衣擦れの音──
「……ん。」
宗次郎はゆっくりと首を傾げて、少しして、そっと蛍の唇を離した。次第に静かに開かれていく蛍の瞼。涙に濡れた瞳は熱を持ちながら、宗次郎の姿をそこに映した。
彼女を落ち着かせるように頬にもう一度くちづけを落として──“ん…”と微かに蛍が声を漏らす。その声すら愛しくて、暫くはその余韻に浸りながら彼女を見下ろしていたけれど。やがてそうっと囁いた。
「…蛍、大丈夫ですか?」
「……っ、うん…///」
息を整えつつ小さく甘い溜め息をこぼす蛍に、宗次郎はまた自身が熱を帯びそうになるのを自覚しながら、少し照れ臭そうに笑った。